弁護士 守屋典子
6月11日、重大少年事件の被害者の審判傍聴を認める少年法改正が成立しました。
加害者が成人の場合には被害者は刑事裁判を傍聴できますが、少年事件の被害者には、これまで加害少年の更生やプライバシーの保護のため、審判傍聴が認められていませんでした。
しかし、被害者が、なぜ事件が起きたのか、なぜ自分や自分の家族が被害者になったのか、なぜ少年は事件を起こしたのか、どのような処遇決定になったのか、そのような処遇決定の理由は何かについて知りたいと思うのは少年事件の場合でも当然のことであり、これらを知ることが被害回復の不可欠の前提です。
そのため、あすの会では、少年事件の被害者が希望する場合には審判傍聴できる制度の創設を求め、活動してきました。
これに対して、被害者の審判傍聴に対しては、加害少年が萎縮して自由に発言できなくなる、加害少年のプライバシーの保護がはかれなくなる等の理由で強い反対意見が出されました。国会での議論においても、反対意見は少なくなかったように思います。
しかし、被害者を前にして加害少年が緊張するのは当然のことでしょう。被害者を前にして嘘が言えなくなるという面もあるでしょう。また、加害少年もいろいろなのであり、全ての少年が萎縮して自由に物が言えなくなるという前提は疑問です。
さらに、確かに被害者が傍聴すると、加害少年のプライバシーの一部は被害者の知るところとなるでしょうが、今回の法改正で傍聴が認められたのは被害者が死亡した場合と、生命に重大な危険がある傷害の場合に限定されています。
そのようなケースにおいては、被害者の知る権利が優先されるべきでしょう。一般国民に対して加害少年のプライバシーが開示されるわけではないのです。被害者と一般国民とを分けて考える必要があるのです。したがって、反対意見には説得力がないと思われます。
今回の改正では、前述のように極めて限定的なケースにおいてしか傍聴が認められませんでした。しかし、被害者が亡くならずにすんだ場合で、生命に重大な危険がなかった場合でも重い後遺症が残り、一生を無惨に破壊されてしまう被害者は少なくありません。
そのような被害者には傍聴が認められないという結果は不十分であり、今後は対象犯罪の拡大を求めていく必要があります。また、12歳未満の少年による事件は一律傍聴の対象外とされました。この点についても更に検討が必要でしょう。
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